気になるブログ二つ「teru0702の日記」「中年社会学」

 面白いブログを教えてもらった。一つはコメント欄で。もう一つはツイッターで。ただし一つはすでに閉鎖されているようだ。


■コメント欄で教えてもらったのは「teru0702の日記」。つい先月末に始まったばかりのブログだけど、更新頻度が高いし面白い。文面から判断するに僕よりもわりと年上の方と思われるけれど、その感性は僕よりも柔らかいかもしれない。
 先日、拙ブログ「リストラなう」日記について言及していただいたエントリがある。
 → 「リストラなう!」は歴史に残るが歴史を欠如した一冊だとオレは断言する
 僕は実はけっこう興味の幅が狭い、ということがこのエントリを読んでわかった。僕は、自分が知らなかったこと、知っていても確証がないことは「リストラなう」日記に書く気になれなかったのだ。
 僕が働いていた会社には組合が二つあり、その一つは大きな労働争議を闘った組合で、和解後も会社から厳重にマークされていた。それは知っていた。すぐそばで働いていた他組合の人たちばかりの編集部があった。彼らは愉快な人たちで、考えも柔軟で、不良で魅力的だった。それは断言できる。だが、彼らの背景にあった争議の歴史は、はっきり言って僕が書き残すには手に余る。間違ったことを書いてしまう可能性も大きい。だから、teruさんがこのような形で僕に突っ込んでくれ、記録にとどめてくれたのはかえってありがたい。
 まだ始まったばかりだけど、面白いブログだ。注視していきたい。


■もう一つが「中年社会学」というブログだ。これはつい最近閉鎖されたようで、元のURLでは何も表示されない。だから昨夜Googleのキャッシュで読んだ。いま見るとキャッシュでも表示されない。残念なことだ。環境が違えば見られるのかな?
 →このURLでキャッシュを読んだんだけど… http://bit.ly/dn9ELx
 このブログは「196x年生まれの月刊女性誌オヤジ編集者が、映画、音楽、読書、激辛料理、東京の地形、ポッドキャスト、時事問題から「生きることの意味」についてまでをぼやく」として、けっこう長く続いていたようだ。突然の休止が本当に惜しまれる。
 その2010-07-31のエントリが「『リストラなう』について」だった。今日になってGoogleキャッシュも表示されないのでweb clipしておいたものを引用する。
(勝手に引用してごめんなさい。ブログ主の方、問題でしたら削除しますのでその際はコメントいただけると幸いです)

(一部略)
 たぬ吉のブログは社内でも当然話題になった。
 ボーナスはもちろん、基本給も時間外もカット。エレベータは止められ、トイレの照明はオフ、会社の前からタクシーがいっせいに姿を消す……そんな時期だった。 よくぞ書いた、という声も、いい気なもんだ、という声も聞こえた。
 私は、といえば、当時、カメラマンや記者のギャラや取材費のカットを余儀なくされていて、「会社はいまこんな状況なんですよ」と、彼ら彼女たちにそのブログの存在を教えたりしていた。「リストラなう」は業界内でたちまち有名になり、PVもうなぎ上り。
 たとえば書店で領収書をもらうときに、会社の名前を言うと「えっ?」と二度見されるようになった。倒産目前の会社という風評が広く行き渡るようになり、広告は引き上げられ、取引先は去って行った。
 もちろんそれらのことは「リストラなう」がきっかけになったわけではない。
 ただそっとダメ押しをしただけだ。
 会社はたぬ吉を甘くみていた。編集部では無能扱いされ、営業部でもみそっかす扱いされていたという。
 夜、暗い廊下にぼうっと立って、通りがかった女性社員に「100円貸してくれませんか」と言ったという話は有名で、気味悪がられてもいた。
 私も、彼のブログを読んで、ふつうにリーダブルな文章が書けるんだ、と正直驚いた。偏見というのは恐ろしい。
 いつだったか、池袋東急でレイトショーを観ていたとき、はあはあと言いながら私に「○○さん、どうも」と声をかけてきたことがある。彼はジョギングがてら映画を観にきた、ということだった。気味悪いといえば悪いが、妙に人なつこく、不思議な距離感を持った男だった。
 こうして一冊の本を出せるだけの才能があったわけで、それを見抜けなかった会社もアレだし、逆に彼のデイリーなプレゼンにも問題があったのでは、とも思う。「リストラなう」を書いているのはそちらの社員では、という取材に、私の会社の広報は「そうであるとも、そうでないとも言えない」と答えた。 なんというかそういう会社である。
 ある意味「後ろ足で砂をかける」ような振る舞いと言えなくもない。が、私が同じ立場だったら同じことを試みたかもしれない、とも思う。
 高額な退職金をもらってやめていった社員は彼だけではない。「渡りに船」「泥棒に追い銭」のようなケースも多かった。そんな中で彼はまっとうなほうだ、とも思う。
 ま、君たちの退職金のためにも、「縮みゆく会社」(C「アエラ」)でもう少し働くよ。(笑)。お元気で。本は買わない。悪いけど。

 そうか、たぬきちは「編集部では無能、営業部でもみそっかす」だったか。なるほど、だったら辞めて正解だったね。
 十五年くらい前、残業しててタバコを切らし、自販機で買おうとして百円足らなかったので通りかかった女性社員から百円借りたのは覚えてる。たしかにあれは突飛な行為だったな。驚かせて申し訳ない。しかしそれが有名な話になっていたとは知らなかった。そんなに変だったか。
 ただ、池袋東急で社員の人と出会った、という記憶はない。他の劇場で何人かの方を見かけて、声をかけたこともあるが、そのうちの誰かがこのブログ主かどうかはわからない。誰なんだろうか。


 このエントリでもわかるように、このブログ主氏は読ませる文章を書く。僕の文章なんかよりよほど上品で、かつ面白い。「リーダブル」とかって褒められたからお返しするわけじゃなくて、正直モノが違うと思う。今はもう読めないのが残念だ。映画やPodcastingについてのエントリも面白かった。
 キャッシュを遡って読んでいくと、たいへん心突き動かされるエントリにぶち当たった。「脳の消滅」と題された、20回にわたるエントリ群だ。こちらはまだ「中年社会学 脳の消滅」でGoogleキャッシュを読むことができる。2年前に、ご自身のご家族について書かれたエントリのようだ。事態の全体像は明言されていないが、たいへん重く、心に刺さる。もしかするとこのエントリに関係した何かでブログを閉じられたのだろうか。だとしたら、こうして「キャッシュで読めるよ」と晒すことはブログ主氏にとってたいへん不本意なことかもしれない。申し訳ないと思う。が、僕はここで読んだことを誰かに伝えずにはおれない。